研究概要 |
平成16年度のマウスを用いた研究により、魚油と共役リノール酸(CLA)を組み合わせにより、CLAの抗肥満作用は維持されるが、CLA摂取に伴う弊害である脂肪肝と高インスリン血症が防止されることが示された。CLAと大豆リン脂質の組み合わせでは脂肪肝の防止には有効であったが、高インスリン血症は改善できなかった。以上のような研究結果をふまえ、平成17年度はまずCLAと大豆油との組み合わせの影響を調べた。その結果、大豆油は魚油や大豆リン脂質と比較し、CLA摂取による脂肪肝の防止に有効ではなく、また高インスリン血症改善効果もなかった。以上より、試験した食品成分のうち、魚油がCLAの代謝攪乱作用の防止に最も優れていると結論された。ここで実験に用いたCLAはt10,c12-CLAとc9,t11-CLAの混合物である。CLAの抗肥満作用、脂肪肝惹起作用はt10,c12-CLAの作用に基づくと考えられているが魚油との相互作用にc9,t11-CLAも何らかの役割を果たしている可能性もある。そこで、t10,c12-CLAと魚油が肝臓と脂肪組織の代謝に与える相互作用を検討した。t10,c12-CLAの投与は脂肪組織に高発現する遺伝子の発現の大きな低下を伴い脂肪組織重量を減少させた。しかし、肝臓で脂肪酸合成系酵素の活性・mRNA量増加と脂肪沈着を引き起こした。魚油の1.5および6.0%の同時添加は、量依存的に肝臓の脂肪酸合成系の酵素活性・mRNA量と脂肪量を減少させた。また、CLA食への魚油添加は脂肪組織重量を増加させ、各種遺伝子の発現も増加させた。さらに、魚油はCLA摂取による高インスリン血症、低レプチン血症も改善した。以上のように、t10,c12-、c9,t11-CLA混合物と魚油で観察された代謝的相互作用はt10,c12-CLAと魚油との組み合わせで再現できることが示された。
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