研究概要 |
病変の非破壊検査法としては,樹木内部の通水阻害を継続観察するために,樹木用MRIでクロマツ苗の材線虫病による萎凋枯死過程,クロマツ切枝の乾燥過程,コナラおよびコブシの切枝の乾燥過程を観察,通導組織の空洞化と水分含有量の低下を継続的に観察する手法を確立した。 樹木への傷害が通水阻害と材変色をもたらすメカニズムを明らかにするための基礎として,生活型の異なる4樹種(ヒノキ,メタセコイア,アラカシ,コナラ)の傷害に対する反応を,季節を変えて調べた。その結果,樹種により変色長が最大となる季節が異なることが明らかにされた。 傷口の乾燥状態を制御して材変色を抑える試験では,ケヤキに穿孔傷害を与え傷害1年後に調査したところ,乾燥するような処理を行った場合に材変色の範囲,程度が顕著であり,傷口を濡れた状態に,特に傷害直後から保った場合に材変色防止効果が高く,傷口表面の状態によって材変色の範囲や程度に差異が生じることが明らかとなった。 病原菌が関わったときの病変の拡大に対する樹齢の違いの影響では,ナラ枯病原菌R。quercivoraの4菌株を感受性の高いミズナラと低いアラカシの苗木に接種したところ,各菌株は病原力が異なる可能性が示唆された。次に,同じR.quercivora4菌株をミズナラとアラカシの成木に接種したところ,苗木の試験で病原力が強いと判断された菌株と成木の試験で病原力が強いと判断された菌株が異なっていた。R.quercivoraは苗木と成木に対する病原力が異なっている可能性が示唆された。 ミズナラ被害材の防御に関する物質では,反応障壁で新たにmethyl gallateやn-propyl gallateがみられ,これらがナラ菌に対する抵抗性成分と考えられる。
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