研究概要 |
高分解能衛星データの解析は、画素が小さいため、従来から用いられている分類手法だけでは、解析が不十分である。一方、最近、導入されてきたオブジェクトを用いた分類手法が注目されている。これは画素の輝度値だけでなく、形やキメ等の因子を用いて分類する手法である。このオブジェクトを用いた分類手法を使って、林分内の立木本数を推定するツールを開発した。画素をSegmentation(区分化)してメンバーシップ値を設定して分類し、1オブジェクトを1本とみなした。その結果、樹高の高い(24m以上)林分では立木本数の推定精度が高かった。一方、推定精度が低いプロットは、立木密度が2000本/haの高密度プロットや列状間伐の影響を受けたプロットに多かった。オブジェクトの数値(輝度値平均値、輝度値標準偏差、Area, Length, Width)とメンバーシップ値との間には相関関係は得られなかった。しかし、高分解能衛星データを利用して、森林内の単木推定の可能性を示すことができた。オブジェクトを用いた分類手法は、都市近郊林の微細なモザイク状の森林を抽出する上でも有効性が確かめられた。 一方、高分解能衛星の利点は、特別の解析をしなくても森林状況が把握できることである。目視判読に関する研究が進めば、高分解能衛星を利用して森林状況が手軽に利用できることになる。そこで、高分解能IKONOS衛星のパンクロマティックを使用し、テクスチャ(キメの細かさ)と林分構造の関係を解析した。その結果、キメと輝度値の変動係数には正の相関関係が認められた。キメの細かさの判断は解析者の主観によるが、輝度値の変動係数から数段階の凡例画像を作成し目視の際の指標とすれば、目視による森林構造の判読が容易になり、森林のXCO2吸収量に関するデータベースの確立に寄与できると考えている。
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