研究概要 |
(材料と方法)実験には挿し木31年生ヒノキアスナロ(マアテ)、および実生30年生ヒノキを用いた。 ・ヒノキアスナロ:薬剤はサリチル酸ナトリウム(SA-Na)0.01,0.1,1%、あるいはサリチル酸メチル(SA-Me)0.01,0.1,1%をそれぞれ単独またはエチレン発生剤エスレル(Et)1%、およびジャスモン酸メチル(JA-Me)1%と組み合わせて調整した。それぞれのペーストは無傷の樹幹表面の径約2cmの範囲に塗布し、アルミホイルとガムテープで被覆した。処理は2006年5月9〜10日に行った。樹脂道の組織観察のための試料採取は約4週間経過後の6月3日に行った。樹皮組織の横断切片を作成し、2mm^2あたりの樹脂道数と面積を計測した。また樹皮採取傷からの樹脂流出量については10月15に流下した樹脂の長さを測定することによって評価した。 ・ヒノキ:薬剤はSA-Na0.01,0.1,1%、あるいはSA-MeO.01,0.1,1%をそれぞれ単独またはEt1%、およびジャスモン酸の生理作用を持つプロヒドロジャスモン(Pro-JA,ジャスモメート:日本ゼオン)1%と組み合わせて調整した。実験方法はヒノキアスナロと同様である。処理は2006年7月14〜16日に行った。試料採取は約5週間経過後の8月20日に行った。またヒノキアスナロと同様に樹脂流下量は10月30日に評価した。 (結果と考察)ヒノキではSA-Na0.01%、Et1%、およびPro-JA1%の混合処理によって、樹脂流出量、樹脂道の断面積ともに顕著に増加することが確認された。ヒノキアスナロではSA-Me0.01%とEt1%およびJA-Me1%と組み合わせで促進効果が認められた。この結果、比較的低濃度のサリチル酸が、エチレン及びジャスモン酸の存在下で樹脂道の分化、樹脂分泌を促進することがわかった。この成果の一部は、2回の国内学会で発表した。
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