研究概要 |
本研究の目的は,地下水が関与して崩壊が深層まで及ぶタイプの崩壊の発生を予測する手法を開発することである。南九州火山地域で発生した地下水型の崩壊地の現地調査と水文観測に基づいて,崩壊発生を支配する因子を抽出し,地下水型の崩壊発生の予測に有効な因子を決定する。今年度の研究実績をまとめると以下の通りである。 1.火山地域における地下水の流動特性を把握するために,鹿児島市西部のシラス台地と出水市矢筈岳において地下水,河川水,湧水の連続観測を引き続き実施した。 2.矢筈岳山体および肥薩火山域において,湧水の分布・流量・水質調査や河川縦断方向の水量・電気伝導度・シリカ濃度の変化点を探す調査を実施した。湧水の分布が多い地点や河川縦断方向の水量・電気伝導度・シリカ濃度が急激に変化する地点は深層崩壊跡地と一致していることが明らかになった。これらの因子は地下水型崩壊発生場の予測の有効な指標となる。 3.火山地域の地下水流動特性を把握するには基盤地形の調査が必要である。地形断面図の作成,侵食谷における基盤岩の位置と標高の測量に基づく地質構造の把握によって基盤地形を再現するための作業を実施した。また,地下水型の深層崩壊が発生する箇所には厚い風化物と地下水が存在する。調査区域内の崩壊跡地,埋没地形,段丘地形,過去の崩壊土砂分布などの調査によって風化物の存在を把握する作業を実施した。 4.地下水型の深層崩壊は発生頻度が小さいために発生メカニズムの解明や発生場の予測を検討するためのデータが少ない。そこで現地調査や空中写真判読によって過去に発生した崩壊地を探し,そこから地形・地質・水文に関する情報を得る作業を行った。過去の崩壊地の検出は,現地における斜面内の滑落崖や凹地などの微地形調査,斜面下部の堆積物調査,空中写真判読による崩壊跡地調査から行った。
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