研究概要 |
研究項目1)灌水を制限して育成したマツ苗木の木部のキャビテーション感受性の変化が,マツの水ストレス回避にはたす役割 クロマツは水欠差に対して、葉の浸透ポテンシャルを調節することで膨圧を保ち、かつ葉が萎凋しないように高い水ポテンシャルの段階で気孔を閉じ、樹体からの水の損失を防ぐ適応方法をとっており、キャビテーションによる水分通道機能の低下は樹体水分の調節機構としては機能しない樹種であることがわかった。 研究項目2)亜高山帯から高山帯への移行帯に分布するオオシラビソの偏形樹形の形成におよぼすキャビテーションの影響 亜高山帯から高山域への移行帯に分布するオオシラビソの偏形樹形は、積雪上部シュートのキャビテーション感受性が高いために、容易に水分通道機能を失い、葉、ひいては枝の枯死をまねきやすい状態になっていることが原因で形成されることがわかった。 亜高山帯から高山域への移行帯に分布するオオシラビソと高山域に分布するハイマツの葉が春に褐変化する原因の一つとして、これまでは冬期の強風により氷切片が葉に吹き付けられることで傷つき、その結果葉からの脱水が促進され、萎凋枯死すると考えられていた。このことを形態学、解剖学的に確認したところ、ハイマツの葉では傷が確認できたが、オオシラビソでは傷は確認できず、オオシラビソに関しては従来の考えは誤りであることがわかった。 研究項目3)針葉樹各種のキャビテーション感受性評価 日本のおける代表的な針葉樹であるスギ、ヒノキ、ハイマツそして本研究で扱ったクロマツ、オオシラビソのキャビテーション感受性を比較すると、土壌条件や気象条件の良くない箇所でも生育可能なマツ科樹木は、より良好な立地に生育するスギ、ヒノキに比べて木部のキャビテーション感受性は高く、水欠差への対応はキャビテーションによる水分通道機能の低下を抑制するために、葉の水ポテンシャルが高い段階で葉による蒸散の調整を行なう樹種であることが明らかになった。
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