研究課題/領域番号 |
16380115
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡邊 隆司 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (80201200)
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研究分担者 |
中村 嘉利 金沢大学, 工学部, 助教授 (20172455)
本田 与一 京都大学, 生存圏研究所, 助教授 (70252517)
渡邊 崇人 京都大学, 生存圏研究所, 助手 (30362403)
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キーワード | ラッカーゼ / 白色腐朽菌 / 発酵阻害 / エタノール発酵 / 異種発現 / バイオマス |
研究概要 |
木材の酵素糖化・発酵にはリグニンによるセルロースの被覆を破壊する前処理が必要である。熱化学的前処理では、発酵阻害物質が生成するため、これらを除去する操作が必要となる。これまでの研究で、Trametes versicolor RC3株のラッカーゼ画分でエタノリシス可溶性画分を処理すると市販の担子菌由来のラッカーゼで処理した場合に比べ、Pichia stipitisによる発酵効率が約2.5倍上昇することが示された。本研究では担子菌RC3株が生産するラッカーゼによる発酵阻害物質の除去メカニズムを明らかにする目的で、ラッカーゼアイソザイムの単離とクローニングを行い、担子菌Pleurotus ostreatusを用いた異種発現を行うと共に、RC3株ラッカーゼを用いて発酵阻害物質を処理した。初めにRC3株の生産するpI8.35のラッカーゼアイソザイムを精製し、N末のアミノ酸配列を決定した。この配列をもとにして、CODEHOP法によりプライマーを作製した。さらに既報の担子菌ラッカーゼに高度に保存されている領域に対応するCODEHOPプライマーを作製し、これらを組み合わせてPCRを行った。さらに、インバースPCR法により周辺領域を増幅し、全長DNAのクローン化、および塩基配列決定を行った。推定アミノ酸配列をホモロジー解析したところ、pI8.35のアイソザイムとは異なるN末端配列を持ち、既報のT.versicolorのLAC4と81%の相同性を持つ新規なラッカーゼをコードしていることが明らかとなった。そこで、この遺伝子にコードされているアイソザイムについてP.ostreatusをホストとして異種発現を行った。分析により今回クローニングしたRC3株由来の酸性ラッカーゼがP.ostreatusにおいて異種発現していることが示された。また、RC3株ラッカーゼを部分精製し、エタノリシス可溶性画分を処理したところ、市販ラッカーゼやアルカリ性アイソザイムの活性が消失したのに対し、酸性アイソザイムのみ活性を保持していることが示された。この安定性が発酵阻害物質除去効果に影響していると推察した。
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