研究課題
基盤研究(B)
木材からエタノールを生産するプロセスにおいては、発酵阻害物質の生成を抑えるとともに、生成した発酵阻害物質を分解・除去することが重要となる。本研究では、発酵阻害物質の分解・除去法としてラッカーゼに注目して研究を行った。また、発酵阻害物質の生成を抑えるエタノール生産プロセスとして白色腐朽菌前処理とエタノリシスを組み合わせたプロセスを検討した。ラッカーゼは、メディエーター存在下でリグニンを強力に分解するが、反応中に生成する有機ラジカルによる攻撃を受け失活する。このため、耐熱性と有機ラジカルに対する安定性の両者を併せ持つ酵素の探索が求められてきた。本研究では、42℃で生育する耐熱性白色腐朽菌Trametes versicolor RC3株のラッカーゼに注目し、その機能を発酵阻害の軽減に利用するための研究を行った。即ち、RC3株ラッカーゼを精製し、5-HMF、レブリン酸、バニリンなどの発酵阻害物質分解能を分析するとともに、ラッカーゼの主要アイソザイムをコードする遺伝子(cDNA)をクローニングし、単離した遺伝子をヒラタケをホストとして高発現させた。また、ラッカーゼの機能を最大限に引き出すラッカーゼ・メディエーター反応の活性化法を見出すとともに、白色腐朽菌とエタノリシス前処理により分離された成分のエタノールへの高効率変換法を開発した。遺伝子を取得したRC3株のラッカーゼは、これまでに報告されているT.versicolorのラッカーゼ(LAC4)と81%のアミノ酸配列の相同性をもつ新規な酵素であり、比較対象として使用した既存の担子菌ラッカーゼと比較し発酵阻害物質除去反応に対する酵素の安定性に優れていた。既存酵素とRC3株ラッカーゼの安定性の違いは、多種の発酵阻害物質を多量に含むエタノリシス可溶性画分と反応させた時に明確に示された。この安定性が、RC3株ラッカーゼの発酵阻害物質除去能力の主要な要因であると結論した。
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