研究概要 |
本研究は、白色腐朽菌が有する特異な難分解性化合物分解能を汚染された環境の修復に利用する、ファンガルレメディエーション工学の確立を目指している。ファンガルレメディエーション工学(Fungal remediation technology)とは、我々研究グループが提案する新しい研究基盤概念であり、バイオレメディエーションの一分野を構成する。白色腐朽菌による理想的フラスコ条件下での環境汚染物質の分解能力を、『いかに実際の汚染環境で再現できるか』を最終目標とし、白色腐朽菌の分解能に影響を及ぼす環境因子の解明、汚染サイトでの特定白色腐朽菌のモニタリング技術による汚染環境での動態把握を試みている。具体的には 白色腐朽菌によるダイオキシン分解機構の解明 2,7-dichlorodibenzo-p-dioxinをモデル基質としたスクリーニングにより塩素化ダイオキシンを高度に分解できる白色腐朽菌を数菌株単離した。またそれらの白色腐朽菌の18SrDNAの配列に基づいた系統解析を行い、これらの菌株が遺伝的に近縁な一群を形成していることを示し、属レベルでの遺伝的類縁関係に着目した新しいスクリーニング法を考案した。また、これら白色腐朽菌はバクテリアでは分解が困難とされる四塩素化ダイオキシンを分解できることを明らかにした。分解代謝物として水酸化物、メトキシル化物、さらにクロロカテコールを同定し、その主要な代謝経路がシトクロムP450による基質の水酸化を経て進行することを明らかにした。 土壌中でのダイオキシン分解試験 2,7-dichlorodibenzo-p-dioxinを予め添加したモデル汚染土壌の白色腐朽菌による分解試験を試みた。20日間の処理で初期添加基質の約70%が分解されることが示された。また、中間代謝物としてメトキシル化物が検出された。すなわち白色腐朽菌を用いて、土壌中のダイオキシンを分解し、中間代謝物を検出することに成功した。
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