研究概要 |
熱帯地方のアマモ場やマングローブ域において,どのような魚種の稚魚が,どのような密度で生息しているのかを調べることによって,両場所が稚魚の成育場となっているかどうかを明らかにした。 調査は沖縄県石垣島浦底湾の吹通川周辺で,7月と10月に実施した。各月において,吹通川の河口にみられるマングローブ域と,それからやや離れて存在するアマモ場,さらに,その沖合にある礁原の砂地,礫地,枝状サンゴ域,および礁斜面のサンゴ域に,1m×20mのベルト・トランセクトを各々5箇所設置した。そして,各トランセクト内に出現した各魚種の個体数をSCUBA潜水,あるいは素潜りで計数し,さらに各個体の全長(1cm区分)も記録した。 6つの生息域において,合計247種の魚類が観察された。種数と個体数はともに,礁原の枝状サンゴ域と礁斜面のサンゴ域で多く,砂地で最も少なかった。アマモ場とマングローブ域で観察された魚類の種数と個体数は,枝状サンゴ域の約1/3から1/2程度であった。 観察された魚種の中で,アマモ場が稚魚の成育場となっている可能性が高い種は,イソフエフキとヒメフエダイの2種であった。両種の小型稚魚はアマモ場に多く出現したが,大型稚魚と成魚はそれぞれ礫地と礁斜面のサンゴ域に多くみられた。一方,マングローブ域を成育場としている可能性がある種は,ニセクロホシフエダイであった。本種の稚魚はマングローブ域に多く出現したが,成魚は主に礁斜面のサンゴ域で観察された。
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