研究概要 |
21世紀に入り,地球環境保全の意識がますます高まっていくなかで,漁業が生態系に与える影響を最小化するための研究が注目され,混獲投棄の問題を技術的に解決するために漁具選択性の向上や漁具改良が実践が各国,各地で行われてきている。この問題について,対象とする生物種や大きさに対して,混獲投棄されるものとの行動特性の違いを利用した選択漁獲の方法論が1980年代から提案されているが,まだ実際的な応用には至っていない。平成19年度としては,漁具認知過程に関連した感覚機能,そして漁具回避能力に関連した運動特性の2つを取り上げて,対象・非対象の生物種別,並びに成長段階別に検討を行い,混獲防除技術のための基礎資料を得ることを目的に実験を行った。実験内容として,当初から実施していた魚類の刺激-反応系に関する行動生理実験を継続し,特にサンマを実験魚とした集魚灯漁法との関係に関する実験結果をとりまとめた。このなかで,光強度と赤・緑・青の波長別に網膜順応過程の詳細を明らかにし,錐体の感度について集魚灯光の色がどのように影響するかを検討した。ほかに,マアジを実験魚として側線系の構造と機能に関する研究,そして遊泳行動に関して心電図測定を利用した疲労と回復に関する研究を展開し,水温条件別に持続速度と中間速度のレベルを明らかにし,また,疲労からの回復過程について検討して,底引網漁法の漁獲過程について考察した。定置網漁法については漁獲物の組成と投棄の現状調査,並びにガザミ籠について小型個体の漁獲防除のための逃避口の設計について水槽実験と操業実験を行った。これらの成果について,日本水産学会年会と漁業懇話会において公表するとともに,学会誌への投稿を行った。
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