研究概要 |
魚類の黄体ホルモン:17α,20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オン(DHP)の精子形成に伴う血中量の変化をサケ科魚を用いて測定したところ、減数分裂の開始期に特異的なピークがあることが明らかとなった。また、DHPの受容体であるプロゲステロン受容体I型及びII型の精巣での発現を観察したところ、特にI型は精子形成の初期の精原細胞とそのセルトリ細胞及び間質細胞で発現していることが明らかとなった。そこでDHPの精子形成への作用機序をウナギの精巣器官培養系で調べたところ、DHPは精子形成誘起雄性ホルモン:11-ケトテストステロン(11-KT)と同様に精原細胞の増殖から精子変態に至る全精子形成過程を誘導することが明らかとなった。しかし、DHPの効果的な濃度と作用時期に違いがある可能性が示唆された。 11-KTとDHPの精子形成への作用機序の違いを明らかにするため、ヒト絨毛性生殖腺刺激ホルモン(hCG)投与により誘導されたウナギの精子形成の進行に伴う精巣での11-KTおよびDHPの含有量を調べた。その結果、精巣では生殖腺刺激ホルモンの刺激により先ず11-KTが産生され、続いてDHPが産生されることが明らかとなった。DHPが精子形成の進行に必要であるか否かを、DHPの抗体によりDHPの作用を抑制した生殖細胞と精巣体細胞の共存培養系に11-KTを添加することによって確かめた。その結果、DHP抗体によって6日間処理した共存培養では11-KTの作用には影響は認められなかったが、15日間処理したものでは11-KTの作用が抑制された。以上の結果より、精子形成に対するDHPの作用は、精子形成開始時ではなく、減数分裂開始前後であることが明らかとなった。
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