研究概要 |
初期卵形成の制御機構を解析するために、コイを用いて卵巣培養系の構築を試みた。1年魚のコイ卵巣をコラゲナーゼ/ディスパーゼにより処理し、比較的大きな卵母細胞を除去した後、卵原細胞が比較的多く存在すると予想される卵巣壁を細切し浮上法により前培養を1ヶ月行った。前培養終了後の組織を観察したところ、比較的多くの卵原細胞は良好な状態で保たれていた。前培養の後、雌性ホルモン:エストラジオール-17β(E2)を添加して更に15日間培養したところ、E2の刺激により明らかに卵原細胞の数が増加した。以上より、コイの卵巣壁培養系は、初期卵形成の制御機構を調べる上で有効な方法である可能性が示された。 精子形成での減数分裂の分子制御機構を調べるために、黄体ホルモン:17α,20β-ジハイドロキシ-4-プレグネン-3-オン(DHP)の刺激により精巣での発現が変化する遺伝子のクローニングを行った。DHPを添加した、あるいは添加していない培養液で6日間培養した精巣片からそれぞれmRNAを抽出し、cDNAサブトラクションを行ったところ、現段階で41種類のDHPの刺激により精巣での発現が誘導されるcDNA断片、36種類の発現が減少するcDNA断片をそれぞれ得ることができた。これらのなかには、DHPを添加していない培養液で培養した精巣片では、ほとんど発現していないが、DHPの添加により著しく発現が誘導されるクローン6種類が含まれていた。これらの中には、ステロイド合成酵素の一つである11β-水酸基脱水酵素やトリプシノーゲンが含まれていた。
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