人工流水環境下、人工種苗、琵琶湖産、海産の3系統計81個体について、摂食行動観察を各個体について朝夕各1回、計100回行った。観察後、個体を氷水中で死亡させた後、重力等の外的圧力に影響されない様に、個体をつり下げる様にした固定装置を用いて10パーセントホルマリンで固定・保存した。形態的利き手の判定は、ホルマリン固定した個体において下顎関節部が前方に位置する側を利き手とした。その結果、52個体で左右の顎の使用頻度に有意差が認められた。人工種苗では右利き9個体、左利き10個体、琵琶湖産では右利き10個体、左利き10個体、海産では右利き7個体、左利き6個体であった。全個体について形態的利き手の判定を行った結果、摂食行動が右利きの個体では体軸が右に歪み、下顎関節部位は左側が前方に位置し、形態的利き手は左利きとなった。それに対して摂食行動が左利きの個体では、体軸が左に歪み下顎関節部位は右側が前方に位置し、右利きであった。従って、摂食行動において有意差が認められた個体に関して、形態的利き手は逆になるという結果が得られ、下顎関節部位、体軸の歪み、摂食行動の左右差の3形質の関係は密な事が示された。また、胸鰭長では、81個対中61個体において形態的利き手と胸鰭短側が一致した。左右の腹鰭位置を測定した結果、65個体において形態的利き手側の腹鰭が後方に位置した。
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