研究概要 |
本年度の実績は以下の通りである。 (1)排卵後濾胞の大量入手、調整法の確立 卵黄形成が終了したマサバ親魚(卵径550-600μm)に、ヒト絨毛性生殖腺刺激ホルモン(500IU/kg)を背筋部に注射投与すると、水温20℃で33時間後に排卵が起こる。排卵を触診とバイオプシーで確認した後、排卵後0,6,12,18,24,30,36,42,48,60および72時間目にそれぞれ5尾ずつ取り上げた。卵巣組織を4℃の生理食塩水の中で緩やかにピペッティングすることにより、容易に排卵後濾胞が剥離し、フィルトレーションと遠心分離を繰り返すことにより、大量の排卵後濾胞を入手できるようになった。しかし、排卵後濾胞は退行が早く、この方法で得られるのは排卵後24時間までであった。得られた排卵後濾胞は、液体窒素で保存することにより、その後のプロテオーム解析、ステロイドのTLC解析、あるいはcDNAサブトラクションに使用できる。 (2)排卵後濾胞の消長過程の形態記載 排卵後経過時間が明確な排卵後濾胞をBouin液で固定し、メタクリレート樹脂による2μmの組織切片標本を作製し、光学顕微鏡により観察した。濾胞腔は排卵後18時間までに完全に閉鎖すること、顆粒膜細胞は排卵後12時間までは伸長するが、その後退行が進行し、48時間で細胞膜の崩壊が起こることなど、退行過程の詳細な形態記載を行った。 (3)排卵後濾胞のプロテオーム解析 排卵後0,6,12,18時間目の排卵後濾胞を用い、高解像度2次元電気泳動システムにより各群の全タンパク質の分離、銀染色法による検出、および各群間での画像解析の比較を行った。現在、全スポット情報のデータベース化と、群間で有無の違いがあるスポット、顕著な増減の変化を示すスポットの選出を行っている最中である。
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