研究概要 |
本研究期間において以下の成果が得られた。 (1)マサバ雌の飼育下における生殖年周期と卵形成に関するステロイドホルモンの血中変化を明らかにした。(2)飼育下でマサバの産卵個体を安定して入手するための技術開発を行った。(3)マサバではhCGあるいはGnRHaの投与時刻に関係なく,卵成熟と排卵はホルモンの種類ごとに一定のタイムコースで進行することを明らかにし,投与時刻の調節により任意の時間帯に人工授精を行うシステムを確立した。(4)GnRHaを投与することにより長期間にわたる産卵を誘導し,卵群における産卵期間,産卵時刻,産卵量,受精率等を明らかにした。(5)マサバ脳下垂体における2種のGtH(FSHおよびLH)産生細胞の免疫組織化学的同定を行うとともに,飼育下におけるマサバの生殖周期に伴うそれら産生細胞の活性変化を解析した。(6)10%ホルマリンで固定されたマサバの卵巣卵を対象として,核移動期卵を判別する二つの透明化法、ギムザ(Giemsa)法およびズダン(Sudan)法を開発した。(7)水温20℃で33時間後に排卵が起こる実験系を用いて、フィルトレーションと遠心分離を繰り返すことにより,大量の排卵後濾胞を入手できる実験系を確立した。得られた排卵後濾胞は,液体窒素で保存することにより,その後のプロテオーム解析,ステロイドのTLC解析等に使用できるようになった。(8)排卵後経過時間が明確な排卵後濾胞の消長過程を記載した。(9)排卵後濾胞(12時間)の総蛋白質を2次元電気泳動(IEF/SDS-PAGE)で展開し,排卵6時間目から特異的に出現するp40,p38の二つのスポットについてアミノ酸シーケンス法によって解析した。その結果,p40由来のペプチドにはYPIEHGIVTNNDMEが,またp38由来のペプチドにはIVHHTFYYELが含まれていることが明らかとなった。
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