ふなずしの微生物作用を明らかにするために、本研究では非培養型分子生物学的手法であるPCR-DGGE法により、ふなずし熟成過程(1年間)における微生物フローラの変遷を解析し、あわせて生菌数、pH、有機酸量などについても測定した。 その結果、熟成中の生菌数は漬け込み開始時の10^2cfu/gから、3日目には10^8 cfu/gと急激に増加、14日目以降緩やかに減少し、1年後には10^4cfu/g程度となった。NaCl濃度は、7日目より魚肉、米飯ともに4%前後で安定し、pHは米飯では14日目までに急激に低下、魚肉では7日目以降に減少し、米飯、魚肉ともに30日目にはpH4以下となり安定した。 PCR-DGGE法による解析の結果、熟成初期にはStaphylococcus属を始めとする多様な細菌群が存在しており、7日目までのバンドパターンは大きく変動していた。ふなずしの優勢菌と考えられる乳酸菌は、7日目から検出され始め、熟成過程を通してLactobacillus plantarum、7日目から14日目まではL.curvatus、90日以降にはL.acetotoleransと相同性の高いバンドが検出された。乳酸菌の増殖に伴うpHの低下、有機酸の増加、微生物相の安定化が観察された。 市販ふなずしをPCR-DGGE解析を行った結果、L.acetotoleransと相同性の高いバンドが高頻度で検出され、製造場所や製造法の違いに関わらず、ふなずしに広く存在する優勢菌であることが示された。なお、L.acetotoleransまたはそれと類似の細菌はふなずしから分離された報告例がなく、本実験において初めて優勢菌として確認された。
|