研究概要 |
最終年度である本年度は,農業の教育機能サービスを農業生産の結合生産物としてとらえて,従来の技術的結合性に加えて,文化的側面を考慮した制度的結合性の観点を導入して,全国の農業体験サービスの提供主体のデータを統計的に解析した.その結果,従来明らかされていない以下の点を指摘できる. 1)結合性の観点から,農業の教育機能サービスを区分すると,作目別、作業別体験は技術的結合性が作用し季節性が強く,食文化・農村文化体験は制度的結合性が作用し季節性が弱いと規定できる. 2)食文化、農村文化体験ではNPO、公益法人などが積極的な提供者となっており,生活文化面の制度的結合性が準公共部門との関連性、親和性を有している.この点は,農家活動由来の制度的結合性の範囲を曖昧にする点でもあるが,他方で広範な体験ネットワークの構築にとっては長所ともなりうる.つまり体験の教育機能は,農家由来の制度的結合性よりも広範に及ぶといえる. 3)共通の課題としてネット対応,有料化などの整備を進めつつ,サービスと教育効果の質的向上に向けた研修プログラムの開発、運営などでNPO・公益法人などの準公共部門および公共部門との連携を図ることが,体験サービスの季節性の緩和と滞在型のサービス提供の展開に有効といえる. 4)以上から,教育機能の増進および農村経済の多角化にとって,制度的結合性の意義を認識することが重要といえる。制度的結合性については,今後需要サイドの分析も含めて実証的研究の蓄積と概念の精緻化を行い,政策設計への適用性を高める必要がある。
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