本年度は初年度であり、まず、水田土壌から発生するガスの採取と分析の体制を整備することが大きな課題であった。大気中の一酸化二窒素濃度を測定するために、計画調書に記したECD付きのシステムガスクロマトグラフ装置の購入手続きを行ったが、放射性物質取り扱いの認可を受ける手続きに膨大な時間がかかり、装置の導入が大幅に遅れた。そこでこの間、水田土壌から発生するもうひとつの重要な地球温暖化ガスであるメタンに着目し、農業土木的因子が水田土壌からのメタンの発生に及ぼす影響について検討を行った。具体的には、制御された環境下で稲のない状態において、異なる間断日数で間断灌漑を行った場合の、水田土壌からのメタンフラックス変動の特性を把握することを目的として、室内実験を行った。山形大学農学部附属農場水田試験地で土壌試料を不撹乱のまま採取して実験室に持ち帰り、恒温室内で、温度20℃で一定とし、まず土壌試料に約1ヵ月間連続湛水し、次に4日湛水4日落水、2日湛水2日落水の間断灌漑を同時並行で41日間行った。間断灌漑中に、土壌試料の状態をモニタリングするとともに、チャンバー法によりガス試料を採取し、土壌試料からのメタンフラックスを算出した。その結果、土壌試料からのメタンフラックスは湛水時に減少し、落水時に増加した。これは、落水時には土壌試料中の間隙が大気と連結されるため、湛水期間中に土壌試料中に蓄積されたメタンが放出されやすい状態になったためと考えられた。4湛4落の場合には2湛2落の揚合よりも総メタン放出量が高かったが、これは、4湛4落では土壌試料中の嫌気的状態がより長く維持され、メタン生成がより活発に行われたためと考えられた。また、間断灌漑を継続すると、落水直後のメタンフラックスの値が大きくなった。これは、間断灌漑により土壌試料中の有機物の分解が促進されたことにもよると考えられた。
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