研究概要 |
昨年度に引き続き,一酸化二窒素に加えて,もう一つの重要な水田から発生する温室効果ガスであるメタンをあわせ,代表的な農業土木的因子である水田水管理がこの2種のガス放出に与える影響について検討を行った。メタン放出の抑制方法として中干しおよび間断灌漑が挙げられるが,それによる一酸化二窒素の発生が懸念されている。本年度は,最高分けつの1週間以上前に中干しを開始する早期中干し区と,移植直後から間断灌漑を行う早期間断灌漑区を設け,慣行区との一酸化二窒素およびメタン放出量の比較を行った。降雨の影響を避けるためビニールハウス内でイネをポット栽培し,クローズドチャンバー法でガスフラックスを測定した。また,イネのない単純化された環境下で異なる日数で間断灌漑を行ったことによるフラックスの変化を把握することを目的として室内実験を行った。 早期間断灌漑区および早期中干し区の観測期間中のメタン総放出量は慣行区のそれの約半分であった。これは,早期間断灌漑区では土壌の酸化と還元が繰り返されたことでメタンフラックスが慣行区の約半分で推移し,早期中干し区では土壌の還元化の進行が慣行区よりも早い段階で緩和されたためと考えられた。一酸化二窒素に関しては,慣行区では突発的な放出が観測された。早期間断灌漑区では一酸化二窒素フラックスの変動が大きく,早期中干し区では中干し後に一酸化二窒素フラックスが上昇した。イネのない条件下では,一酸化二窒素フラックスおよびメタンフラックスはいずれも湛水時に減少し,落水時に増加する傾向が見られた。これは,湛水時に生成されたメタンが落水時に放出され,一酸化二窒素は落水時の好気・嫌気両環境が不均一に共存する環境で生成されたためと考えられた。
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