研究概要 |
国内の低平農地域では近年,乾田化が進むとともに都市化による混住化も進みつつあり,洪水時には従来にも増して正確な内水位の予測や的確な排水施設の制御が求められている.一方,アジアモンスーン地域の国外の低平農地域では,一般に排水施設の整備水準が低く,低い整備水準下でのより効率的な施設管理が望まれている. 本研究では国内外の低平農地域を対象とし,その洪水緩和機能の定量化を試みるとともに,得られた洪水緩和機能を積極的に利用した内水位の予測手法や排水施設の制御手法の開発を目指した.洪水緩和機能の定量化を実証的に進めるため,まず国内では,筑後川下流域の千代田流域に試験流域を設け,降雨量,水位ならびに高精度GPSによる可降水量のデータを集積した.国外では,北部ベトナム紅河デルタの低平農地域に位置するPhu Lamコミューン地区を対象に水文データの収集ならびに流域踏査,聞き取り調査を実施した.さらに,得られた観測データをもとに数値実験を行い,両流域における洪水解析モデルや最適化手法などに関する検討を行った. その結果,筑後川下流低平農地域では,排水施設の適切な管理によって,湛水時間や湛水面積を大幅に減少できること,GPS可降水量が大雨の予測指標として利用可能であることが示された.一方,Phu Lam地区では,暗渠の構造上の問題や暗渠や水路の管理上の問題から,排水機場から離れた水田では長期間の湛水の危険性が示された.さらに,低平農地域における水質保全機能,クリークのもつ機能的な側面なども,併せて明らかにされた.
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