研究概要 |
1.畑作圃場でのカバークロップ利用と土壌生物性 (1)養分循環: カバークロップの利用(ライムギ,ヘアリーベッチ,裸地)と耕うん方法(不耕起,プラウ耕,ロータリ耕)が後作のオカボ栽培における耕地内の窒素循環について検討した。ヘアリーベッチは最も多くの窒素を吸収し,オカボ栽培期間中にオカボへ移譲した。不耕起栽培とカバークロップの組合せで、土壌炭素増加が期待された。 (2)土壌生物相: 耕うんによるカバークロップ残渣の圃場還元は土壌微生物数の土中分布に大きな影響を与えた。カバークロップ利用で微生物数は増加し,不耕起栽培では土壌表層で増加した。糸状菌密度は不耕起栽培・カバークロップ利用で多くなった。土壌線虫数はカバークロップ利用で増加した。大型土壌動物は不耕起栽培で増加した。 3)土壌養分の圃場内変異の解析 輪作圃場に固定サイトを設け、2003年から2005年において土壌pHおよび硝酸態窒素含量の空間的な変異の推移を検討した。空間的安定性は土壌pHで比較的高く、硝酸態窒素含量では低いと考えられた。硝酸態窒素は土壌pHよりも高い変動係数を示し、特定作物栽培下で高くなる傾向が認められた。 2.水田におけるカバークロップ利用による養分供給 持続型水田管理技術として,水田にシロクローバーを栽培し,草生マルチあるいは鋤込んで水稲を栽培した。西南暖地では緑肥分解が速いために,緑肥由来の養分は幼穂形成期まで保持されず,脱窒および流亡により吸収率が低くなった。灌水時期の遅延により,収量及び作物乾物重の増加と倒伏率の低下を認めた。土壌中のアンモニア態窒素濃度も緑肥分解の遅延に対応して,栽培後期に高くなる傾向が見られた。 3.施設栽培でのカバークロップの効果 施設内でヘアリーベッチマルチ内にトマトを慣行の半量の窒素で栽培すると、慣行窒素量を施用した無マルチ(耕起)圃場と同等の収量が得られた。ヘアリーベッチマルチ圃場では表層において硝酸態窒素が高濃度に維持された。マルチ下では約3%の炭素蓄積が認められた。
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