研究課題
今年度は,茨城県つくば市所在のクライマトロン(気候・CO_2制御)チャンバー施設にて,水稲のメタン放出の及ぼす高CO_2濃度の影響を調べた。先行研究で、メタン放出速度が異なるとされる水稲4品種を、チャンバー内に設置したプラスチックコンテイナーに植え、土壌プロファイル・スキャナーを用いて、イネの根の発生消長を計測するとともに、放出されるメタンを採取し、土壌ガス測定装置で計測した。結果は,次のとおり。1.高CO_2濃度により、メタンの放出量が増加した。2.メタンの放出量には、明瞭な品種間差があるが、CO_2濃度と品種間に交互作用は無い。3.品種間のメタン放出量の違いは、根長あるいは根重の違いと概ね対応する。4.生育が進むと根の周囲を中心に気泡が観察され、生育とともに気泡の面積が増加した。5.気泡の面積は、根量の多い品種で大きく、少ない品種で小さかった。6.メタン放出量の時期的変化と気泡の量の時期的変化を比較すると、生育初期から中期にかけて、両者は良く対応したが、生育後期にメタン放出量が減少するのに対して、気泡の量は増大の一途をたどった。以上の観測結果から、CO_2濃度上昇によるメタンの放出増加と、メタン放出速度の水稲品種間差について、次のように考えられる。a. CO_2濃度上昇でメタン放出量が増加することは、水稲品種に共通する。b.品種によるメタン放出量の多少は、基本的には根の量に支配されており、一般に根量の少ない日本型品種は、多いインド型品種よりもメタンの放出が少ないと想定される。c.メタンの放出と生成の違いにより、土壌中の気泡の量が変動する。気泡として存在するメタン量をモニターすることは、全体のメタン放出量を把握するために重要であるが、土壌プロファイル・スキャナーが有効な手法である。
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