果実の貯蔵において、できるだけ低温(-2〜0℃の氷温域)にすることは鮮度維持の観点から重要であるが、高温(40〜50℃)もまた注目されている。本研究は、低温から高温の範囲内(-2〜50℃)において、温度に対する果実の生理生態的な応答(果実応答)を調べ、それらの同定(モデル化)を行い、モデルのシミュレーションから、どのような温度操作が果実の鮮度維持および品質改善に有効なのかをシステム科学的に究明し、その方法論の実用化を検討した。研究成果は以下のようである。実験用果実としてはトマトと温州ミカンを用いた。 1.最適な熱ストレス(40℃、12〜24時間)を与えた果実(とくにトマト)は、高温に対して抵抗性(耐性)がある(水損失や呼吸が抑制される)ばかりでなく、低温に対しても抵抗性があり、低温障害をかなり回避できた。この結果は、熱ストレスを与えることで低温耐性が強くなり、氷温(-2℃)よりもっと低温にした貯蔵が可能となり、従来の氷温貯蔵法より鮮度をもっと維持できた。 2.実用化の観点から、簡易で低コストな熱ストレス負荷の方法(気温を高める、温水につける、温水を吹き付ける方法など)を検討し、氷温域との最適な組み合わせで、愛媛県の特産である柑橘類(伊予柑)の貯蔵に応用し、良好な結果を得た。
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