研究概要 |
照明光の波長が可変な分光照明装置と、近赤外領域の画像を撮影可能な近赤外カメラを組合せ、近赤外領域の任意の波長における分光画像を取得可能なシステムを構築した。本システムを用いて水滴及び氷粒の分光画像を、1,300-1,600nmの範囲で、10nmおきに撮影した。同じ条件で標準白色板の分光画像も撮影した。吸光度の定義に従い、得られた分光画像より水及び氷の可視吸光スペクトルを算出したところ、1,450nm付近にある水の吸収帯が、氷においては1,500nm付近にシフトすることが明らかとなった。次に、供試材料として大豆種子を用意し、0,20,40,60分間純水に浸漬した後、水分移動を止めるため、液体窒素に浸して急速凍結した。凍結した大豆種子を、試料の1ミクロン単位での押し上げと試料上端部の切削を繰り返して試料断面を連続的に露出させる「マイクロスライサ」にセットし、半分に切断した。次に、上記のシステムを用いて、切断面の1,500nmにおける分光画像を撮影した。さらに、撮影した画像の各画素の輝度値を吸光度に変換し、吸光度の小さい部分は青、大きい部分は赤となるよう、吸光度の大小に応じて各画素を彩色した。その結果、吸水時間が増加するに従い、種子の外縁部および胚軸の周辺部から胚乳の中心部に向けて吸光度の高い部分が広がる様子が観察された。このような吸光度の分布は吸水過程における水分の動きと一致していると考えられ、本手法により大豆種子内の水分分布が可視化できることが示唆された。
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