研究概要 |
交付申請書に記入した3つの計画のうちリン酸が導入されている位置の同定(構造解析)に関しては検討を進めたが満足のいく結果は得られなかった。しかし,残りの2つは計画通りに行うことができ,以下の結果が得られた。 (1)グルコース約2〜6残基あたり1個がリン酸化されたリン酸化デキストリンを調製し,それらをマウス脾臓細胞に添加して培養し,各種免疫担当細胞数を調べた。その結果,調製した4種のリン酸化デキストリンはすべて脾臓細胞に対してマイトージェン活性を示し,中でもグルコース約3個あたり1個がリン酸化されたもの(グルコースの平均重合度31個)は,B細胞,キラーT細胞,NK細胞およびマクロファージ数を有意に増加させるとともに,IL-12やIFN-γ mRNAの発現を強く促進することが示された。(2006年秋開催日本食品工業科学会中部支部会で報告) (2)カゼインホスホペプチドまたはリン酸化デキストリン添加飼料で飼育したマウスパイエル板細胞からmRNAを抽出し,それらをDNAマイクロアレイに供することによりそれら無添加飼料で飼育した場合との比較で遺伝子変動を網羅的に計測した。その結果,カゼインホスホペプチドを加えたものもリン酸化デキストリンを加えたものも非常に類似した変動を示し,IgAを構成するJ鎖の合成に関係するmRNAの発現がそれら無添加飼料の場合より増加した。また,カルシウムの吸収に関連するCalbindinやカルシウム依存性のCalpactin I, Calnexinなどの合成に関係するmRNAの発現もそれらの添加により増加した。さらに,それら添加飼料での飼育によりで肥満細胞に含まれる炎症性プロテアーゼやIL-13の合成に関係したmRNAの発現が減少し,抗腫瘍作用に関係する幾つかのタンパク質の合成に必要なmRNAの発現が増加した。(2007年度春開催日本畜産学会大会で2つの演題として報告)
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