研究概要 |
現在、処理に苦慮している家畜排泄物を有効に活用し、エタノールや水素にバイオコンバージョンさせる手法に関しての基礎研究を行った。その結果、増殖促進因子として酵母抽出物を要求しない有用なエタノール生産性の好熱性嫌気性細菌3株の単離に成功した。これらの細菌の16S rRNA遺伝子配列に基づいて系統解析を行った結果、Clostridium, Thermoanaerobacterium, Thermoanaerobacterにそれぞれ近縁の種であることが明らかになったが、相同性はいずれも高くなく新種の細菌であることが示唆された。これらの細菌を共培養し、最もエタノール生成を高める細菌の組み合わせを決定し、ある程度、家畜排泄物をエタノールと酢酸に変換できるようになった。これによって、培養コストのかからない家畜排泄物の分解が可能となった。次に、その後の廃水処理に貢献する微生物の単離に着手し、家畜排泄物の分解によって生じた酢酸を水素に変換する光合成細菌や畜産排水の着色を脱色する細菌の単離に成功した。酢酸を水素に変換する光合成細菌は、酢酸を同量の水素に変換することができた。また、脱色細菌は、染料排水ではほとんど完全に脱色できたが、畜産排水では完全に脱色することはできなかったものの約27%程度の脱色は可能であった。以上、本研究で単離されたこれらの細菌を組み合わせて家畜排泄物を分解させれば、家畜排泄物を効果的にエタノールや水素といった新エネルギーに変換でき、また、その後の廃水処理も容易に行える可能性を示した。さらに、窒素を同化できる光合成細菌は土壌改良能力が高く、処理後の残渣にはこの光合成細菌が大量に含まれており、残渣には堆肥としての付加価値が発生していることも予想され,る。実用化に向けてさらなる研究が必要であるが、家畜排泄物の効果的な処理方法を提案できる可能性がある。
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