研究課題/領域番号 |
16380185
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
杉田 昭栄 宇都宮大学, 農学部, 教授 (50154472)
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研究分担者 |
田中 秀行 宇都宮大学, 農学部, 教授 (70091949)
福井 えみ子 宇都宮大学, 農学部, 助教授 (20208341)
青山 真人 宇都宮大学, 農学部, 助手 (90282384)
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キーワード | ハシブトガラス / フォルマント / 声紋 / 鳴管 / 鳴管筋 / 声道 / 性差 |
研究概要 |
カラスがお互いに異性を識別する方法を調べる第一段階として、カラスの雌雄の形態的・生理的特徴を把握する必要がある。そこで本年度はカラスの雌雄判別の方法として鳴き声、発声器官、声道および羽の性差について検討した。鳴き声に関する実験は、麻酔下において胸部圧迫による人工的に鳴き声を誘発する方法(実験1)とオス、メスそれぞれ単独飼育をして同一環境条件下で鳴いた自然発生の鳴き声を収録し分析する(実験2)の二方法を行った。実験にはハシブトガラス成鳥を使用した。解析は声紋分析装置を用いて声紋波形の特徴、声紋成分出現周波数域などを調べた。結果:人工的に発声を誘起した鳴き声では、声紋にみられる第一フォルマントはオスで平均635Hz、メスで668Hzに位置しており雌雄間に大きな差はなかった。一方、第二フォルマントと第三フォルマントは、メスはそれぞれ2190Hz、4956Hzに位置していたのに対しオスのそれらは1873Hz、4001Hzとなりメスより低い周波数域に位置していた。自然発声ではメスの第一フォルマントが平均1398Hz、オスのそれは1373Hzの周波数域に位置しており、雌雄間に差は見られなかった。第二フォルマントと第三フォルマントは、メスはそれぞれ3919Hz、6101Hzに位置していたのに対しオスのそれらは3193Hz、5018Hzとなり、人工発声誘起実験と同様にメスより低い周波数域に位置していた。 声道、発声器官の形態的観察より気管内腔の径はオスがメスのそれより太いことが分かった。さらに、鳴管の動きを調整する鳴管筋のうち腹側鳴管筋、腹外側鳴管筋および背側鳴管筋でオスの方がメスより大きいことも明らかとなった。これらの結果より、ハシブトガラスの鳴き声には性差があることが示唆され、さらに鳴き声を調整する鳴管筋の一部にも雌雄差があることからカラスの鳴き声の性差発現機構が形態的にも裏付けられた。 羽の雌雄差では成鳥オスの主翼羽は青い光沢を強く呈していたがメスのそれは弱かった。この光沢は構造色によるものと考えられるがその検証は17年度に電子顕微鏡で調べることとする。
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