本研究では卵母細胞に特異的に発現する遺伝子Oogenesin(Oog1)の機能解析を行った。Oog1は受精後の1細胞期後期から2細胞初期にかけて核に移行することが明らかになっているが、Oog1自身には核移行シグナルは存在しない。このことから、Oog1が他のタンパク質と相互作用して核移行することが考えられたため、Oog1と相互作用するタンパク質をYeast Two-Hybrid法を用いて解析した。その結果、核移行シグナルを持つChchd6という未知のタンパク質が同定された。このタンパク質はCHCHドメインを持つタンパク質であり、培養細胞を用いた解析により、Chchd6はこのドメインを介してOog1と相互作用することが明らかとなった。卵母細胞および受精卵を用いてこの遺伝子の発現解析を行った結果、Oog1と同様に卵母細胞で強く発現し、その発現は受精卵の初期の段階まで発現しており、4細胞期以降は発現が急激に減少することが明らかになった。このことは、Chchd6タンパク質もOog1タンパク質と同じく母性由来のものであり、受精後の早い時期に機能していると考えられる。卵巣切片を用いた免疫染色の結果から、Chchd6も卵子特異的に発現していることが明らかになった。また、受精卵を用いてChchd6タンパク質の細胞内局在を調べた結果、Oog1が核移行する1細胞期後期にChchd6タンパク質が核周辺に局在することが明らかとなり、Oog1の核移行がChchd6を介して行われていることが示唆された。さらに、Oog1が核移行に関わるタンパク質であるImportinβやRanとも相互作用する結果も得られており、これらのタンパク質との相互作用がどのような意味をもつかについてさらに検討する必要がある。
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