研究課題
基盤研究(B)
甲状腺刺激ホルモン(TSH)放出ホルモン(TRH)は、視床下部で産生され、下垂体からのTSHの放出を刺激する。TSHにより甲状腺ホルモンであるサイロキシン(T_4)とトリヨードサイロニン(T_3)の分泌が亢進される。甲状腺ホルモンは組織に働き、熱産生を促すことが知られている。一方、孵化後間もないニワトリヒナは保温が必要であり、産熱機構は成熟したニワトリと比べて十分に発達しているとは言えない。そこで、幼雛期のヒナにおける産熱機構についてTRHを基点として調査した。<方法>卵用種雄ヒナを実験に供試した。(実験1)TRHを脳室投与し、その後60分間の直腸温度と熱産生量を調べた。(実験2)TRHを脳室投与15分後に採血をし、血漿T_3およびT_4濃度を測定した。(実験3)T_3を腹腔投与した後の5時間の直腸温度を調べた。(実験4)副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)を脳室投与し、その後60分間の熱産生量を調べた。(実験5)TRH、CRF受容体アンタゴニストまたはTRHとCRF受容体アンタゴニストを同時に脳室に投与し、15分および30分の直腸温度を測定した。<結果および考察>(実験1)TRHの脳室投与により、ヒナの直腸温度は有意に高くなり、熱産生量も高くなった。(実験2)T_3およびT_4の腹腔投与では直腸温度に変化は認められなかった。(実験3)TRHの脳室投与により血漿T_3およびT_4濃度に変化も認められなかった。(実験4)CRFの脳室投与により、ヒナの熱産生量は高くなった。(実験5)CRF受容体アンタゴニストとTRHの同時投与でTRHによる体温の上昇は抑制された。新生ヒナのTRHによる体温上昇は、甲状腺ホルモンの作用を介さず、視床下部-下垂体-副腎皮質軸刺激による可能性が示唆され、幼雛期における産熱機構の特殊性の一部が明らかとなった。
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