研究課題
孵化後間もないニワトリヒナは保温が必要であり、産熱機構は成熟したニワトリと比べて十分に発達しているとは言えない。一方、甲状腺刺激ホルモン(TSH)放出ホルモン(TRH)は、視床下部で産生され、下垂体からのTSHの放出を刺激する。TSHにより甲状腺ホルモンであるサイロキシン(T_4)とトリヨードサイロニン(T_3)の分泌が亢進される。甲状腺ホルモンは組織に働き、熱産生を促すことが知られている。そこで、幼雛期のヒナにおける産熱機構についてTRHを基点として調査した。TRHの脳室投与により、ヒナの直腸温度は有意に高くなり、熱産生量も高くなった。T_3およびT_4の腹腔投与では直腸温度に変化は認められなかった。TRHの脳室投与により血漿T_3およびT_4濃度に変化も認められなかった。副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)の脳室投与により、ヒナの熱産生量は高くなった。CRF受容体アンタゴニストとTRHの同時投与でTRHによる体温の上昇は抑制された。新生ヒナのTRHによる体温上昇は、甲状腺ホルモンの作用を介さず、視床下部-下垂体-副腎皮質軸刺激による可能性が示唆され、幼雛期における産熱機構の特殊性の一部が明らかとなった。また、孵化前における熱産生に育種選抜の影響を認めた。一方で、熱生産に係わる行動に変化を及ぼす栄養素の検索を行った。ジペプチドであるカルノシンは行動を亢進するが、分解されると逆に行動を沈静化させた。筋肉に主に含まれるクレアチンは、ストレス時に脳内で増加し、ストレス反応を減少させ、行動を静める作用を有した。細胞内膜に多く存在するリン脂質のホスファチジルセリンにはストレス行動を抑える作用があり、その構成成分であるセリン残基に重要な働きを見出した。茶カテキンの主成分であるエピガロカテキンガレートにもストレス時の行動を緩和する作用を確認した。
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