研究概要 |
DNA複製は、増殖因子の結合と核移行、各種関連遺伝子の転写、複製開始複合体の形成と伸長反応が連続的あるいは不連続的に進行し、かつそれらはミスマッチ修復機構によって厳密に監視されている。DNAミスマッチ修復機構は、きわめて多くの生物種に共通して存在するゲノム監視のシステムで、その主体は個々の塩基置換、欠失・挿入、複製のズレをプルーフリーデイング機能をもつポリメラーゼによって正確な塩基配列へと置換する作用である。我々は、MRLマウス精巣の減数分裂中期特異的アポトーシスを誘発する因子としてポリメラーゼ酵素群の一つに数えられるエクソヌクレアーゼ1(Exol)の変異を発見した。本研究の目的は、癌誘発さらにその治癒機転をExolの不完全型選択的スプライス機構に注目して解析することにある。 今年度は、MRLマウスの特異的表現型の一つである熱ショック抵抗性精母細胞の存在を規定する因子の同定を行った。また、減数分裂中期特異的アポトーシスを規定する因子であるエクソヌクレアーゼ1周辺の遺伝的バックグラウンドを同一にしたコンジェニックマウスの作製を行った(B6-MRL^<Exol>)。現在まで、B6-143M,B6-403M,B6-113Mマウス、さらにはB6-2Con,B6-452M,B6-456Mの作出がほぼ終了した。現在、それらの精巣形態を解析中である。その長期飼育によって糸球体腎炎を発症する例が多数見られた。平行して、アンチセンスExol(ExoR)ならびにtruncate Exol(trExol)遺伝子導入トランスジェニックマウスの作出を終了した。これらについても精巣を中心に形態解析を続行中である。Exol特異抗体を合成ペプチドを用いて作製した。免疫組織化学的に精巣での発現を確認したが、反応性・特異性ともに弱く今後の研究に用いるためには若干の工夫が必要と判断された。
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