卵胞顆粒膜細胞の生存・死は卵胞の発育・閉鎖と密接に絡み、子孫の数を決定する鍵を握る。一方、研究代表者等は、遺伝子ファミリーを形成するプロテインチロシンホスファターゼ(PTP)のうち少なくとも25種が、ラット性周期の種々のステージで顆粒膜細胞に発現することを見出した。本課題では、このうち、PTP1B、PTPεM、TC-PTP、SHP-1に着目し、その作用や分子機序を細胞および個体レベルで解析することを目的としている。 平成16年度は以下の成果を得た。 (1)トランスフェクション効率の極端に低い顆粒膜細胞において、細胞レベルの実験を進める上で、アデノウイルスベクターの利用が不可欠である。これまでに、TC-PTP、SHP-1の野生型と基質トラップ型を含む組み換えアデノウイルス、さらにノックダウンに必要なSiRNAを入れた組み換えアデノウイルスをPTP1B、PTPεM、TC-PTPそれぞれに関して作製し、さらなる研究の材料作りを行った。 (2)PTPεMは、顆粒膜細胞の生存に対する負の制御因子であることを以前に同定したが、その機序に関して細胞レベルでさらに詳しく解析し、分子メカニズムをほぼ明らかにすることができた。 (3)PTP1BはPTPεMとは逆に、顆粒膜細胞の生存に対する正の制御因子として働くことを明らかにし、その作用機序の一部を明らかにした。今後、SiRNAを用いたノックダウン系等を用い解析を進めて行く。
|