性周期において、多くの卵胞は発育・成熟途中で卵胞顆粒膜細胞のアポトーシスにより閉鎖に陥り退縮する。この排卵数決定機構の仕組みの詳細は未だ不明である。研究代表者は、顆粒膜細胞中に25種類ものプロテインチロシンホスファターゼの発現を見出した。本研究では、卵胞発育を正に制御する(あるいはそう予想される)PTP(PTP1B、TC-PTP)と、負に制御する(あるいはそう予想される)PTP(PTPε、SHP-1)の計4種のPTPに焦点を当て、その機能と作用機序を明らかにすることを目的として実験を行っている。現在までに、PTP1BおよびPTPεのsiRNAをアデノウイルスベクターに組み込み、顆粒膜細胞の初代培養系でこれらPTPを特異的にノックダウンする系を確立した。その結果、少なくともPTPεは予想どおり顆粒膜細胞の生存を負に制御し、アポトーシスを誘導することを明らかにした。さらに、その作用機序として、細胞が細胞骨格を介して細胞外マトリックス因子に接着する際に重要となるFocal Adhesion Kinaseを脱リン酸化し、それにより細胞接着が減少しanoikisを起こすことにより細胞死に至ることが判明した。現在、PTP1Bに関しても同様の手法でその機能の解析を行っている。また、SHP-1とTC-PTPに関しては、それらの野生型およびドミナントネガティブ型を挿入した組み換えアデノウイルスベクターの作製は完了し、siRNAの系を作製中である.
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