研究概要 |
本年度は,まず我々の作出したAs16遺伝子導入イネを栽培し,その第1世代の種子(遺伝子導入したカルスより再分化した組換えイネに実った種子,T1種子)と第2,第3世代の種子(T2及びT3種子)における蓄積ブタ回虫抗原蛋白量を比較した.その結果,T2種子におけるAs16産生量はT1種子とほぼ等しく,高産生を維持していた.それに対し,T3種子におけるAs16蛋白産生量は,T1種子及びT2種子に比べ,十分の一程度に減少していた.組換えイネにおけるサイレンシングが誘導された可能性も考えられるが,同時に栽培した全T3ラインにおいて種子におけるAs16蛋白産生量が減少していたこと及び追肥を行わなかったことなどから,何らかの栽培条件のために産生量が低下した可能性もある.次年度は,T2種子のAs16産生パターンの解析により,今年度にホモ接合体であることが確認されたT1種子を用いて,As16遺伝子挿入部位のクローニング及びそのゲノム領域の活性化状態を,メチル化を指標として解析する必要がある. T2種子を,粘膜アジュバントであるコレラトキシン(CT)とともに経口投与したマウスにおいて,ウェスタンブロット解析によりAs16特異抗体の産生が確認され,また,それらのマウスでは,ブタ回虫成熟卵の感染が抑えられていることが示された.このことより,As16蛋白産生組換え種子の経口投与により防御免疫の誘導が可能であることが明らかとなり,さらに組換え種子のみの投与では抗体産生は誘導されなかったことから,組換えAs16産生の効率化等の課題が明らかとなった.次年度に,追肥等の栽培条件を改善しつつ,Ku博士の作出したC4光合成関連遺伝子導入イネと交雑し,光応答性のAs16蛋白産生の増強が認められるかどうかを検討する.
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