研究概要 |
本年度の実験計画では,これまでに作出した,ブタ回虫As16遺伝子導入イネを,トウモロコシ由来C4光合成酵素を過発現する代謝改良組換えイネを交配し,交雑種において,高光量照射条件でのAs16蛋白産生量の増強が認められるかどうかを検討することを予定していた.しかし,ワシントン州立大学のKu博士の移動により,本年度における代謝改善イネの輸入が困難となり,本年度内に,As16産生イネと交配させることができなかった.次年度6月にワシントン州立大学を訪問する際に,組換えイネ種子を譲渡してもらえるように考えている.また,前年度に我々が作出したAs16遺伝子導入イネの第3世代種子におけるAs16産生量は,その原因は不明であるが,第1,2世代種子に比べ十分の一程度に減少していた.作出したAs16産生は,ブタ回虫のコドンをそのまま用いており,コドンを植物型に変換することにより,植物におけるAs16蛋白産生量の向上および安定した産生が期待できると考えた.タバコ,イネ,コムギなどの植物におけるコドン使用頻度を参考とし,PCR法を用いて,ブタ回虫As16遺伝子のコドンを植物型に改変した.植物コドン変換As16遺伝子の植物における発現効率を,コムギ胚芽無細胞蛋白合成系により検討した.作製した遺伝子および変換前の遺伝子をそれぞれ発現用プラスミドに挿入し,RNA転写および翻訳を行ったところ,コドン変換遺伝子を用いた場合は,非変換遺伝子を用いた場合の2倍程度のAs16蛋白が産生され,コドン最適化の植物におけるAs16蛋白産生効率化への効果が示された.また,コムギ胚芽無細胞蛋白合成系により,大腸菌蛋白産生系に匹敵する90μg/mlものAs16蛋白が産生された.次年度は,代謝改善イネとAs16産生イネを交配させることに加え,このコドン変換As16遺伝子をイネに導入することも計画している.
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