研究概要 |
作物の可食部位に病原体抗原蛋白を生産させ、摂食により経粘膜(経口)免疫を行う、いわゆる"食べるワクチン"は、安価・安全で非侵襲型の新しい免疫方法として注目されている。我々は、ブタ回虫第3期仔虫の感染防御抗原(As16)遺伝子をイネに導入し、As16産生組換えイネを作出し、その種子における蛋白発現を確認した。組換え種子における抗原蛋白蓄積最の増加を目指し、As16遺伝子組換えイネと、米国ワシントン州立大学(WSU)のKu博士が開発したトウモロコシの光合成に関わる酵素を導入した代謝改善イネと交配することを計画した。しかし、平成16年度にAs16遺伝子導入イネ(tgRICE/CTBAs16)を栽培したところ、第2世代種子におけるAs16産生量は第1世代種子とほぼ等しく,高産生を維持していたが、第3世代種子におけるAs16蛋白産生量は,第1、2世代種子に比べ,十分の一程度に減少していた。また。平成17年度に、WSUのKu博士が移動したことにより、代謝改善イネの輸入が困難となったため、ブタ回虫As16遺伝子コドンの穀類への最適化により、抗原産生量の増加が見込めるかどうかを検討した。コムギ胚芽無細胞蛋白合成系により検討したところ、コドン変換遺伝子を用いた場合は,非変換遺伝子を用いた場合の2倍程度のAs16蛋白が産生され,コドン最適化の植物におけるAs16蛋白産生効率化への効果が示された。また、平成18年度には、交雑により導入遺伝子産物の産生低下が回復することを期待し、tgRICE/CTBAs16を非組換え米等と交雑させたが、ホモ接合体とヘテロ接合体の間にCTBAs16蛋白産生量の差は認められず、本組換え体における導入遺伝子産物産生底下は、交雑により解除されるようなサイレンシングによるものではないことが考えられた。本結果を踏まえ、さらなる抗原産生量の改善が望まれる。
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