研究概要 |
卵母細胞は顆粒膜細胞に情報を発信して、ゴナドトロピンの機能を調節して、卵母細胞自身の成長や成熟を調節していることが、最近の研究から明らかにされつつある。その代表的な因子として、GDF-9が知られている。これはTGF-βファミリーに属し、1990年代後半にその構造が明らかにされ、その遺伝子欠損マウスを用いた研究から、卵胞発育に深く関わっていることが報告された。その他、卵母細胞にはTGF-R様因子やEGF様因子などの未知因子の存在が考えられている。そのような情報因子を明らかにするには、高精度で高感度の方法で検出する系が必要である。本研究では、哺乳類卵母細胞で生成され顆粒膜細胞/卵丘細胞に作用して増殖・分化を誘導するバイオモジュレーターに焦点を絞り、その実体を明らかにするために、これまでとは異なる視点からアプローチした。ゴナドトロピンが作用して、cAMP応答(CRE)配列をレポーター遺伝子に連結させて体細胞に導入した新規検出系を開発した。本研究により開発された検出系は,高感度で簡便でしかも発光を定量化することが特色である。CRE配列をルシフェラーゼ遺伝子に連結させ体細胞に導入し、シグナル入力による転写活性の変化を可視化して計測するものである。新規の検出システムの開発により、卵子で新たなバイオモジュレーターの発見へつながる可能性があり、また卵胞発育や卵子成長・成熟を制御する分子機構の理解が深められることが期待される。また、この検出系の応用としては、胚が発信する情報因子の探索にも使える。例えば、子宮の細胞に予想されるような応答塩基配列を組み込んだベクターを構築して、培養子宮細胞に導入し、胚と共培養を行い、転写活性の変化を計測する。今後、細胞-細胞あるいは細胞-胚間のコミューニケーションの解析など広く応用される。
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