研究概要 |
新規ペプチドとしてニューロメジンU(NMU)受容体に結合するニューロメジンS(NMS)を発見した。そこで、NMUおよびNMSの生体時計および光同調機構におよぼす役割について検討した。NMUあるいはNMSをラットの脳室へ投与すると、投与時刻依存性に行動リズムの位相変位をおこし、また視交叉上核(SCN)においてFos蛋白質の発現と時計関連遺伝子per1mRNA発現量の増加をおこした。新規蛋白質NMSは時計部位に特異的に局在し、その受容体もSCNに局在していること、またNMUとNMSの投与で実際に視交叉上核にFosが発現したことから、NMUおよびNMSが視交叉上核に作用していることが証明された。さらに、NMUで位相が変位するときには、per1,per2,NGF1,NGF2,JunB,JunCなどの時計関連遺伝子mRNAの発現量も変化させたことから、NMUとNMSは時計のリズムの調節に重要な役割を演じていることが推測された。次に、NMUのノックアウトマウスにおいて行動リズムを解析した。まず、12時間:12時間の明暗交代条件下では、12例中8例において、顕著なリズムが認められず、残り4例は暗期に集中した行動量のリズムが示された。一方、恒常暗下における自由継続リズムを解析したところ、パワースベクトラム解析において6例で約24時間のところにピークの発現が認められず、このことから、リズムの消失が推定された。残り6例中の5例は24時間の周期成分は確認されたが、行動量が減衰していた。また1例はワイルドと差の無いリズムを示した。 以上の結果、NMUは視交叉上核内において、光の同調機構および時計のリズム発信機構のいずれにも関与していると推測された。
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