研究概要 |
研究は、ロドコッカス・エクイ病原性プラスミドがどの様に病原遺伝子群を獲得して、潜在プラスミドが病原性プラスミドに進化し、馬に対する病原性獲得メカニズムを解明することにある。強毒株が保有する病原性プラスミドはそのRFLP型別から世界中に12種類のプラスミド型が存在する。PCRやサザン・ハイブリダイゼーションの結果を基に作成されたプラスミド地図と点変異解析結果の比較検討から、12種類のプラスミド型を5つのグループに分類することができた。グループの内訳は(1)群が85kb I、II、III及びIV型、(2)群が90kb II及びV型、(3)群が87kb I及びIII型、(4)群が90kb II、III及びIV型、(5)群が87kb II型であった。ロドコッカス・エクイ中等度毒力株の21種類の病原性プラスミド用いて全塩基配列が解明されている1型プラスミド(pREA3)と比較検討した。PAI近傍では両端に存在する挿入因子(invA, resA)の塩基配列がpREA3のプラスミド型と一致した群と変異した群に大別された。PAI内の遺伝子及びその右隣のORFには変異が全く認められないのに対し、PAIのより下流(約23,000bp)では遺伝子の挿入や欠損などの多様性が認められた。また中等度毒力株は強毒株に比べVap遺伝子群にも変異が多く認められた。無毒株が保有する潜在性プラスミドについてサザン・ハイブリダイゼーションを行ったところ、韓国済州島で分離株が17箇所で陽性となり、病原性プラスミドのプロトタイプが無毒株の潜在性プラスミドの中に存在することが強く示唆された。本研究から、強毒株と中等度毒力株における病原性プラスミドのvap familyを含む領域は、異なる系統の菌から侵入した遺伝子塊pathogenicity island(PAI)である可能性が示唆され、さらに強毒株と中等度毒力株のPAIは同じ起源を持ち、多型性を形成した後にR.equiの潜在性プラスミドに侵入したことを強く示唆した。
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