研究課題
吸血性のマダニ類は、他の吸血昆虫とは異なる独特の吸血生理および血液消化機構を持つと考えられている。マダニ中腸内腔では、宿主血液消化の初期段階に、酵素による溶血が起こる事が示唆されているが、溶血に関与する酵素分子および溶血機構については明らかにされていない。我々がこれまでに、国内最優占種のフタトゲチマダニHaemaphysalis longicornisより分離したセリンプロテアーゼHlSPは、マダニ中腸上皮細胞に発現し、中腸内腔に分泌されていることを免疫組織化学およびイムノブロット法にて明らかにした。大腸菌発現の組換えHlSP(rHlSP)は、in vitroにおいて宿主ウサギ赤血球に対し濃度依存的な溶血活性を示し、1時間以内に最大94.5%の溶血を引き起こすことが確認された。rHlSPの溶血活性における至適pHは6.0であった。また、rHlSPは、宿主赤血球膜の構成成分であるband 3蛋白質に対して、特異的な親和性を持つことが示された。HlSPdsRNAの血体腔への注入によってHlSPのノックダウンを行ったマダニ個体では、中腸内腔での溶血の阻害が観察された。以上の成績より、HlSPはマダニ中腸内腔において、band 3蛋白質を介した溶血作用を発揮すると考えられた。本研究ではさらに、中腸で発現するロイシンアミノペプチダーゼ(HLLAP)についても生化学的および細胞生物的解析を実施し、マダニの宿主血液消化、とりわけ、ヘモグロビン分解の最終酵素として重要な役割をはたしていることが明らかとなった。また、フルクトース6リン酸トランスフェラーゼの生化学的および逆遺伝学的解析によって、吸血開始から胞血に至るマダニ個体の外骨格(クチクラ)の維持に深く関与することを明らかにした。
すべて 2007 2006
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