研究課題
各大学で独自に採用しているMRI標準断層面を統一しないとMRI画像の比較ができない。そこで犬の最適頭部MRI標準断層面を検討した。8犬種56頭を対象に3次元画像構築用のフリーソフト(Ziosoft Exa Vision LITE)を用いて分析したデータから信頼区間を求めた。その結果、前交連と後交連を結ぶ前交連・後交連面と第四脳室底面の形成角が、長頭種、中頭種、および短頭種と変わるに連れて、次第に大きくなることが明らかとなった。従って、犬種差を小さくするためには、テント上腔とテント下腔で異なる標準断層面を用いることの重要性が示唆された。各犬種において、テント上腔における前交連・後交連面、およびテント下腔における第四脳室底面を基準にして、これらの基準面と、現在、日本の獣医領域でMRI標準断層面として使用されている硬口蓋面、脳底面、および眼窩下耳孔面との相対角を比較検討した。その結果、前交連・後交連面および第四脳室底面に対して、硬口蓋面は直線の傾きおよびパラツキが最も大きかった。すなわち、脳以外の面に標準断層面をとると、犬種間および犬種内のバラツキが最も大きくなることが明らかとなった。今回のEUにおける獣医学部との話し合いの結果、 EUの全ての獣医動物病院がこの標準断層面を使用していることが分かったので、我々はこのデータを提示して、この標準断層面の非合理性を指摘した。脳底面および眼窩下耳孔面の標準断層面は、硬口蓋面のそれに比べるとパラツキが比較的小さかった。これらのデータから、全ての犬種に応用できる標準断層面は、テント上腔では前交連・後交連面、テント下腔では第四脳室底面が最適であることを証明することができた。しかし、小動物ではMRI撮影に全身麻酔を用いるので短時間撮影が望ましいことを考慮すると、実用面での応用にはまだ検討の余地が残されている。
すべて 2005
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