研究課題
犬のMRI撮影の標準断層面を、テント上腔では前交連・後交連面、テント下腔では第四脳室底面に設定すると、短頭種、中頭種、長頭種に関わらず、最も変異の少ない断層面が記録されることを昨年度の研究で明らかにした。しかし、二つの標準断層面でMRI撮像を実施ことは時間を取り過ぎることが問題となり、臨床的には第四脳室底面を標準断層面としてMRI撮像することが最も現実的な選択であるという考えが有力となった。そこで、現在、犬のMRI標準断層面の世界基準が設定されていないため撮像を互いに比較検討することが不可能となっている現状を是正することを目的として、硬口蓋面を標準断層面としてMRI撮像をしている米国のフロリダ大学獣医学部、ペンシルバニア大学獣医学部、および英国のケンブリッジ大学獣医学部と話し合いを実施した。犬のMRI標準断層面は第四脳室底面に設定することを世界基準とすることを提案し、議論をした。しかし、日本と異なり、MRI技師がMRI撮像をしている米国と英国では、標準断層面設定が最も容易な硬口蓋面を用いている獣医学部が多く、今、標準断層面を変更することは困難という意見を説得することは困難であった。3年間にわたって、山口大学、麻布大学、日本獣医生命科学大学、および日本大学の動物病院でMRI撮像を集積してきた結果、脳の局所性病変症例数は意外に少ないことが明らかとなってきた。そこで、次年度では意識的に局所性脳疾患を集積することとなった。また、脳の局所性病変は変性病変が少なく、腫瘍などの占拠性病変が多いことなども明らかになってきた。占拠性病変では、病変部位の異常症状が認められるだけではなく、より広汎な症状が認められる場合が多かった。これは占拠性病変に起因する圧迫によって生ずる症状と考えられ、MRI撮像で圧迫をどのように評価するかという問題が、次年度の研究の大きな問題となってきた。
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