研究課題
基盤研究(B)
乾燥地域の植物は、その生産量に於いて劣っており、常識的には利用価値が低いと考えられている。しかし、厳しい環境条件下で生育し、耐性を強めながら進化して生き延びてきた植物は、環境因子に対する様々な耐性遺伝子を備えており、質的に評価すれば人との係わりに対して有用となる因子を多く持っているといえる。したがって、そのような植物の有用性を見出し、その利用法を開発することにより、乏しい植物資源の付加価値を高め、よって沙漠、乾燥地の産業創造に資するというシナリオも実現の可能性があると考えられる。そこで、本研究では、代表的な乾燥地域として研究グループがこれまで様々な調査を進め、土地勘を持っている中国の内モンゴル自治区、オーストラリアの西部、北アフリカのチュニジアおよびモロッコの4つのフィールドにおいて、有用生物資源の探査、伝統的薬用植物のバイオアッセイ法による有効な生理活性のスクリーニング、有用植物が生育する水環境との関係や水質の分析及び植生分布のリモートセンシングによる見積もり法等の検討を行った。その結果、乾燥地域に生育する植物はその生存環境に応じて、人に対して健康の維持・増進、疾病の治療等に有益な効果を及ぼす様々な機能を有することが確認できた。今後は、各乾燥地域において更に植物の有用性の証明例を増やし、普遍的な科学的知見として定着させていくことが大切である。また、生物資源が貧弱で、経済基盤も弱い乾燥地域の整備と発展のための新たな手法として、生物資源の質的優位性を生かした開発手法の確立を目指さなければならないと考えられる。環境要因に関しては、特徴的な因子が見られ、それらの解析や分析はなされたものの、データ的に十分なレベルで無いので、その充実とさらに地域性を考慮した検討が必要であると結論された。
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