研究概要 |
1.各種農業生態系からの人畜共通病原微生物の分離・収集・保存 日本産またはタイ産の植物病原または根圏土壌,および国内の家畜スラリー等の有機物施用土壌をそれぞれ収集し,選択培養報を用いてBurkholderia cepacia(セパシア菌)を多数分離した。また、ヒト他各種臨床試料由来菌株を分譲により収集し,分離株はスキムミルクに懸濁し,凍結保存した。 2.分離細菌の種の同定およびGenomovar判定 分離菌株はいずれも16s rDNAの塩基配列からB.cepacia群と同定された。また,16s rDNA(DdeI処理)およびrecA遺伝子(HaeIII処理)のRFLPパターンに基づき,遺伝子型(genomovar:Gv.)の決定を行った。その結果,農業環境由来の大多数(81%)の菌株はI型に,残り(19%)はIII-B型に判別された。これに対して,臨床由来株はII型以外の遺伝子型(I〜V型)に分布するが,過半数はIII-A型(29%)およびIII-B型(33%)に判別された。 3.抗菌物質産生能による有用菌株の評価と選抜 抗生物質ピロールニトリンの生合成関連遺伝子(prnC)に特異的なDNA断片は,環境由来菌株の多数からPCR増幅されるのに対して,臨床由来菌株では検出頻度が低かった。ヒト由来のセパシア菌伝染系統(B.cepacia epidemic strain)に存在するマーカー遺伝子(esmR)は,特異プライマー(BCESM1、BCESM2)を用いたPCRにより遺伝子型III-AおよびIII-Bからのみ特異的に検出された。環境由来菌株と臨床由来菌株におけるprnCの分布は,それぞれ86.5%および25%であり,それらのほとんどは遺伝子型Iに属した。これに対して,esmRの分布は,それぞれ11.6%および45.9%であり,いずれもIII-A型またはIII-B型に属した。ほとんどの菌株においてprnCとesmRの分布は,それぞれ偏在したが,環境由来菌株の約5%には両遺伝子が存在した。
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