研究概要 |
ヒト表皮角化細胞(HK)、ヒト線維芽細胞(HF)の単層培養系で、ラミニン5(LN-5)、IV型コラーゲン(Col-4)、VII型コラーゲン(Col-7)の産生促進因子の検討を行った。各成分の遺伝子発現にはリアルタイムPCRを用いた定量的解析法を確立し、また、産生されたタンパク量を測定するためにサンドイッチELISA法を作製した。その結果、アスコルビン酸により、Col-4,Col-7の産生が促進され、特にCol-4の産生は顕著に増加した。各種因子では、特にTGF-β1により3成分とも2〜4倍産生が促進された。 現状の基底膜形成不全の培養人工皮膚で、上記促進因子、基底膜分解酵素MMP-2.9やプラスミンの阻害剤効果を検証した。促進因子の基底膜形成への効果は明確でなかったが、MMP-2,9阻害剤が基底膜形成を促進することを再確認した。さらにMMP阻害剤存在下、アプロチニン(セリンプロテアーゼ阻害剤)を添加するとさらに良好な基底膜形成が観察された。現在、この基底膜形成促進機構を検討中である。 細胞制御要因として、メカニカルストレスの作用の検討を開始した。張力負荷培養装置を用い、マウス由来骨芽細胞株の単層培養系で、メカニカルストレスに応答するXII型コラーゲンのプロモーター領域の解析を行い、伸縮繰返し実験系を確立した。この系を用い、レスポンスエレメントの同定を行っている。今後、ヒト細胞系に広げていく。一方、コラーゲンゲル系での実験には実験装置の改良が必要である。 培養人工皮膚での毛包原基形成の可能性を検討するため、バーシカン-GFP陽性毛乳頭細胞を指標にマウス毛乳頭濃縮画分を調製した。この細胞を懸濁細胞液あるいはスフェロイド状に調製後、表皮角化細胞と共にコラーゲンゲル上に播種した。培養1、2週間後の組織観察で上皮組織の陥没が低頻度であるが観察された。しかし、凝集した毛乳頭細胞は真皮内には認められず、真皮-表皮間に定着させるための実験系の改良を検討中である。
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