研究概要 |
基底膜構造形成を促進するMMP阻害剤(CGS27023A)およびセリンプロテアーゼ阻害剤(アプロチニン)の効果の再現性を確認するために3回異なるシリーズで培養人工皮膚を作製した。いずれの場合も、再現性よく表皮重層化、表皮分化マーカー発現、基底膜成分沈着が起こっていた。微細構造解析により、基底表皮細胞の基底面には幅30nmの基底板がほぼ全域にわたって観察された。透明板は幅50nm程度であったが、ヘミデスモソームに特徴的な基底細胞下電子密層は明確でなかった。基底板の直下には40-140nm径のコラーゲン細線維が観察されたが、この時点では係留細線維は確認できなかった。しかし、基底膜状態と表皮分化状態との関連性が示唆された。この標準系で表皮-真皮相互作用について表皮層の有無で真皮線維芽細胞の細胞外マトリックス関連遺伝子の発現をオリゴアレイ法で検討したところ、MMP-1,3,7,13の発現が誘導されていた。今後、定量的解析を行い確認する。伸展負荷や周期的伸縮負荷をかけ細胞活性促進を検討したが培養人工真皮での細胞外マトリックス関連遺伝子発現促進は認められなかった。また、培養人工皮膚では表皮層と真皮層の結合が弱く剥離してしまうため、力学的負荷をかけることは適さないと結論した。マウス毛乳頭細胞をヒト培養人工皮膚に定着する方法を検討し、毛乳頭細胞を含む系だけに、表皮組織の陥没や真皮内に細胞凝集塊やGFP陽性細胞を含む組織像も一部観察された。今後、より大きな細胞塊を持つ系やこれらの細胞塊のGFP陽性率を上げるために単層培養系から見出された陽性維持薬剤(BIOなどGSK3阻害剤)を添加し、毛包を含む培養人工皮膚の培養法の確立目指す。
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