研究概要 |
植物で有用タンパク質を生産するモレキュラー・ファーミングにおいて小胞体で合成されるタンパク質の安定性が重要である。本研究は小胞体タンパク質の安定性に重要な小胞体タンパク質の品質管理機構の分子機構の解明を目指している。平成17年度は小胞体の主要なシャペロンに着目し、1、翻訳後の挙動、2、発現制御機構について検討した。1については、シロイヌナズナのBip、カルレティキュリン、PDI対する抗体を作成し、タンパク質の挙動を調べた。Bipは転写レベルでは糖鎖合成阻害剤であるツニカマイシンにより顕著に誘導されるのに対してタンパク質レベルでは殆ど増加しなかった。パルスチェイス実験と免疫沈降実験からBipタンパク質の合成は増加する事が示され、小胞体ストレス下ではBiPのターンオーバーが促進される可能性が示唆された。2については、シロイヌナズナに3個の遺伝子が存在するBipについて主として解析した。Bip1,2は構造、発現様式ともに非常に類似しているがBip3は構造が異なる。またBip1,2が低ベレルで恒常的に発現しており、小胞体ストレスにより誘導されるのに対し、Bip3は通常は殆ど発現せず、小胞体ストレスにより顕著な誘導を受ける。加えて転写因子AtbZIP60の遺伝子破壊株においてBiP1,2の発現誘導に変化は見られないがBiP3の誘導は大きく抑制される。以上のことからBiP1,2とBiP3は異なる転写調節機構を受ける事と考えられる。実際、BiP1,2のプロモーターにはP-UPRE、BiP3のプロモーターにはERSEという異なる配列が存在する。AtbZIP60のP-UPRE、ERSEに対する結合をゲルシフトおよび酵母one-hybrid法により確かめたところ、結合に違いがあることも認められた。酵母one-hybrid法によりAtbZIP60以外の転写調節因子の探索を開始している。
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