研究概要 |
これまでに真核細胞においてホスファチジルイノシトール(PI)リン酸と特異的に結合するタンパク質について多くの報告がなされた。分裂酵母のPI 3-Pと特異的に結合するドメインとしてFYVEドメイン及びPXドメインが報告されている。そこで分裂酵母の全ゲノム塩基配列を検索したところ、FYVEドメインを持つタンパク質は5個、PXドメインを持つタンパク質は少なくとも13個存在することがわかった。そこでこれらの全破壊株を作成して諸性質の解析を行なった。PXドメイン含有タンパク質の中で出芽酵母のVPS5及びVPS17遺伝子と相同性の高い遺伝子破壊株で胞子形成に異常が認められることがわかった(Koga et al.Genes Cells,9,561-574,2004)。またFYVEドメイン含有タンパク質の中では出芽酵母VPS27及びVAC1ホモログ遺伝子破壊株が液胞タンパク質輸送に欠損を示すことが明らかになった。またPI 4-Pと結合するENTHドメインを持つend4+遺伝子と命名した遺伝子が分裂酵母においてエンドサイトーシスに必須であることを明らかにした(Iwaki et al.Yeast,21,867-881,2004)。さらに分裂酵母におけるPI 4-P及びPI 4,5-P2の細胞内局在を調べる目的で、動物由来のPI 4-P及びPI 4,5-P2と特異的に結合するPHドメインとGFPとの融合タンパク質を作成して発現させた。その結果、PI 4-Pはゴルジ装置に特に多く存在し、またPI 4,5-P2は細胞膜に多く局在していることを明らかにした。また分裂酵母細胞内のPIリン酸を脱リン化するホスファターゼ破壊株を作成し、その特異性について検討を行なった。
|