研究概要 |
1.光学活性相関移動触媒を用いるアラニン誘導体の不斉マイケル反応及び不斉アルキル化反応を検討し、中程度の不斉収率ではあるが不斉四級炭素の構築に成功した。生成したマイケル付加体は容易に環化し、新たなピロリドン形成反応の開発に成功した(Heterocycles,2006)。またアラニン誘導体のイミン保護基を調整する事により、同条件で1,3-双極子付加反応が進行する事を見いだした。 2.ジアゾエステルは有機塩基存在下アルデヒドと反応しアルドール型付加生成物を与える(Tet.Lett.2004)。本年度は得られたジアゾエステルの選択的な還元条件を探索し、効率良くヒドラゾノエステル及びヒドラジノエステルへ変換する事に成功した(Tetrahedron,2006)。ジアゾエステルとの反応をオルト-ヨードベンズアルデヒドと行った後、同様な変換にて得られたヒドラゾノエステルをN, N'-ジメチルジアミノエタン存在下、銅触媒による芳香族分子内アミノ化反応に付すと6員環形成が生じ高収率でシンノリン-3-カルボン酸エステル誘導体が得られた。一方、ヒドラジノエステルは末端窒素原子をアシル化した後、芳香族アミノ化反応に付すと5員環形成反応が進行しN-アシルアミノインドリン誘導体が生成した。シンノリン、及びN-アミノインドリンはいずれも医薬品や天然物の骨格として見いだされており、それらの新合成法の開発が期待される。 3.Grubbs錯体をビニルオキシトリメチルシランと反応させると、これまで効率の良い合成法が確立されていなかったヘテロ環状カルベン配位子を有するルテニウムヒドリド錯体が高純度・高収率にて合成される事を見いだした。さらに、得られたルテニウムヒドリド錯体が二重結合の選択的異性化及び環化異性化反応を触媒する事を見いだし、多置換インドール及びインドリン合成に応用した(JOC,2006)。
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